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口蹄疫 経済的損失回避へ、封じ込め徹底(産経新聞)

 宮崎県で拡大を続ける家畜伝染病・口蹄(こうてい)疫。感染の疑いがある家畜の出た農場などは200カ所に達し、牛や豚など14万頭以上が殺処分の対象となった。主な発生現場の半径10キロ圏内では、感染の疑いがない牛や豚にも“時間稼ぎ”のためワクチン接種を行い、すべて殺処分される。農家は「感染していない牛や豚まで…」とやりきれない。徹底した対策の理由は何か。

(高橋裕子、菅原慎太郎)

 口蹄疫は牛や豚以外にも羊、ヤギ、シカなど蹄(ひづめ)が偶数に割れている「偶蹄目」が感染する家畜伝染病。ウイルスに感染すると、1週間から10日前後で発症。舌や口の中、蹄の付け根など皮膚の柔らかい部分に水疱ができ、発熱や大量のよだれなどの症状が出る。

 口内や足の水疱が裂けると痛みでエサが食べられなくなったり、歩けなくなったりしてやせ衰えるが、それでも死ぬのは成長した動物なら数%程度。その上、農林水産省は「人には感染しない。感染した牛や豚の肉や乳を口にしても人体に害はない」という。

 それでは、なぜ政府は口蹄疫の封じ込めに躍起になっているのか。一番の理由は、家畜の経済的な価値の下落だ。

 「口蹄疫の経済的なインパクトは強い。最も警戒すべき家畜伝染病の1つだ」。農水省の疫学調査チームの明石博臣東京大大学院教授(動物ウイルス学)はこう解説する。

 家畜が次々にやせ衰えれば商品価値が落ち、高品質が売りのブランド和牛などは価値を失う。国内外の消費者の和牛に対するイメージも落ちる。「日本の畜産にとって経済的ダメージは計り知れない」(畜産関係者)といい、最近では宮崎県から遠く離れた関東地方の畜産農家からも「他人事ではない」と不安の声が上がるようになった。

 さらに、口蹄疫の伝染力は強い。感染した動物の体液や便への直接接触はもちろん、さまざまなルートで伝染する。ワラなどの飼料に付着したウイルス、空気感染…。どんなルートなのか、専門家にも明確に分からないことが多いという。

 殺処分が決まった種牛49頭について救済を求める宮崎県側に対し、政府は「例外は認めない」と厳しい姿勢を取ったが、背景には「感染を食い止めないと日本の畜産全体への信用がなくなる」という強い危機感があるといえそうだ。

           ◇

 日本で10年ぶりに発生した口蹄疫は、海外でもたびたび猛威をふるっている。

 大規模な被害で知られるのは英国での2001(平成13)年の発生だ。被害はフランス、オランダなど欧州連合(EU)諸国にも広がった。英国だけで650万頭が殺処分され、被害額は80億ポンド(約1兆円)に上った。農水省によると、農家への補償だけで約2280億円になったという。

 今回日本で初めて使用されたワクチンで、封じ込めに成功したのは01年に発生したオランダだ。発生から半年で、一定期間発生がなくワクチン接種をした家畜がいない「ワクチン非接種清浄国」として国際獣疫事務局(OIE)に認定された。一方、台湾では09年2月の発生を完全に押さえ込めず、現在もワクチンを使っている。

 現在発生しているのは、アジアではほかに中国、韓国などで、中国では05年以来、断続的に起きている。ワクチン非接種清浄国は今年5月25日現在、豪州、英国、米国など62カ国。ワクチン接種で新たな発生を抑えても輸出に一部制約があることなどから、日本もワクチン非接種清浄国を目指している。

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